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立退き料の算定方法

 立退き料の算定方法は、前記「立退き料の内容は?」で述べたとおり、基本的には下記
 1+2+3+4+5+6で算定します

 1.家賃の差額の補償
 2.営業補償等
 3.造作買取りないしは費用償還額の補償
 4.引越料などの移転に要する実費の補償
 5.賃借人が他に移転することにより被る精神的もしくは生活上の利益

   の喪失に対する補償
 6.その他の補償

 各項目の算定方法は下記になります。

1.家賃の差額及び一時金の算定方法

家賃差額及び一時金の算定方法は当該建物及びその敷地と同程度の代替建物の賃借の際に必要とされる新規の実際支払賃料と現在の実際支払賃料との 差額の一定期間に相当する額に賃料の前払的性格を有する一時金(権利金、礼金等)の額及び賃料の預り金的性格を有する一時金(敷金、保証金等)の金利負担 分を加えた額(以下、「差額方式」という)で求めます。

【差額方式】

  計算式:

  考え方:「公共用地の取得に伴う損失補償基準」の借家人補償の考え方と軌を一にす
         るもので、正常支払賃料と実際支払賃料との差額の一定期間分と、新たに
        賃借する場合の賃料の前払的性格の一時金相当額、預り金的性格を有す
        る一時金の金利負担分を積算して価格を求める方式です。

2.営業補償等の算定方法

               
営業補償等は、営業が移転等の為に一時的に休止となる営業休止と通常の営業の継続が不能の為に営業廃止をせざるを得ない場合に分けられます。

  ①営業休止補償

  以下a~fを合算して求めることとなります。

  a.営業休止期間中も通常どおりの営業を行っていたら、得たであろう収益に対する補
    償(収益減収の補償)

     計算式:収益減の補償額=年間の認定収益額×補償期間

           求め方:年間の認定収益額は本来の営業目的に関連した収益から本来の営業
               目的に関連した費用を差し引いて求めることになります。
               補償期間は、移転先の状況等により大幅に異なることとなりますが、用
               対連細則第27では別表4「建物移転工法別補償期間表」による期間に
               前後の準備期間を加えた期間を標準として行うこととされています。

別表第4「建物移転工法別補償期間表」


                 *構内再築工法とは、公共用地等の取得に伴い、残地に曳家移転す
                ることができないが、従前の建物を撤去して従前の建物に照応する
                 建物を建築することにより、残地が合理的な移転先として従前の価
                 値と機能を確保できると認められるときに採用される工法です。

                **曳家工法とは、残地に建物を曳家することができると認められるとき
                に採用する工法です。

  b.店舗を移転し、その期間休業する事により、一時的に得意先を喪失し、減収すると
    想定される収益に対する補償(得意先喪失の補償)

     計算式:得意先喪失の補償額=
                           従前の1ヶ月の売上高×売上高減少率×限界利益率

           求め方:従前の1ヶ月の売上高は、年間の売上高÷12ヵ月で求めます。
               売上高減少率は、営業再開後の減少した売上高の従前の売上高に対
               する比率を言い、主に用対連細則第27条1項(5)の別表8「売上減少率
               に伴って生じた過去の営業補償事例を業種別に追跡調査をし、その結
               果を売上減少率表としてとりまとめたものです。得意先喪失の補償は、
               営業再開時以降に減少する売上高の全てを補償対象とするものでは
               なく、減少した売上高の中の限界利益に対して補償が行われるために
               最後に限界利益率を乗じます。限界利益率は、
               (固定費+利益)/売上高、もしくは(売上高-変動費/売上高)で求め
               ます。

                                     別表第8「売上減少表」
                                (1ヶ月間の売上高を100とする)
                               別表第8はここをクリックしてください。

  c.営業休止期間中に支出される固定的経費の支出に対する補償
   (固定的経費の補償)

           求め方:用対連細則で例示されている固定的経費は次のとおりです。
               (a)公租公課(固定資産税、都市計画税、自動車税等)
               (b)電気、ガス、水道、電話等の基本料金
               (c)営業用資産の減価償却費及び維持管理費
               (d)借入地地代、借家家賃、機械器具使用料及び借入資本利子
               (e)従業員のための法定福利費
               (f)従業員の福利厚生費
               (g)従業員のための賞与、同業組合費、火災保険料、宣伝広告費等

  d.営業休止により収入を失うこととなる従業員等の賃金相当額に対する補償
   (従業員に対する休業補償)

           求め方:企業者又は事業者が負担する営業休止期間に対応する従業員の休業
               手当相当分。用対連細則第27条1項第3号では、従業員に対する休業
               手当相当額は、休業期間に対応する平均賃金の80/100を標準とし、
               60/100から100/100の範囲内で定めることとされています。

  e.営業休止により商品、仕掛品、原材料等の減損に対する補償
    (商品、仕掛品等の減損の補償)

           求め方:商品、仕掛品等を移転する際に生じる破損、荷ずれ、荷痛み等による減
               損の補償は、通常運賃の割増料金を補償し、併せて、保険料相当額
               (運送保険料等)を補償することとされています。
               割増項目としては、次のものがあります。

  f.その他の支出が予想される補償(移転広告費等)

           求め方:その他の支出が予想される補償としては以下のものがあります。

               (a)移転広告
                 移転広告費は、閉店時と開店時の2回を原則とし、次の算式により
                   求めます。

                   移転広告費=
                             (チラシ印刷代+新聞折込料)×配布枚数×回数

               (b)移転通知費
                 移転通知費は、通常、閉店時に1回、ハガキにより特定の得意先
                   等に対して行い、次の算式により求めます。

                   移転通知費=
(ハガキ印刷代+切手代)×通知枚数

               (c)開店祝費
                 開店祝費は、開店時に得意先や取引先を招待し祝賀するときに要
                   する費用で、次の算式により求めます。

                   開店祝費=α+β+γ
                          α:招待に要する費用=
                             (招待状・封書+印刷代+切手代)×招待客数
                          β:祝賀会費=
                       (酒代、肴代、赤飯代、記念品代等)×招待客数+会場費
                          γ:その他の費用

               (d)その他の費用
                 ・法令上の手続き及びその他の諸経費
                 ・野立看板等の書換えに要する費用
                 ・営業用自動車の車体文字の書換えに要する費用
                 ・パンフレットその他の用品等で所在、電話番号、店舗の写真等が
                  入っており、今後使用できないものの補償
                 ・その他

  ②営業廃止補償

  以下a~eを合算して求めることとなります。 

  a.営業検討の補償
     営業権とは、通常、暖簾とか老舗とか呼ばれている企業財産の一種であり、企業の
     もつ営業上の収益力が外の同業種の平均的な収益力に比較して超過している場
     合、その超過している部分を生む原因となっている一種の無体財産権である。

     (a).営業権が市場で取引されている場合
      用対連細則第26においては、「営業権等の価格は、営業権等が資産と
は独立
      して市場で取引される慣習があるものについては、正常な取引価格によるもの
      とする。」と規定されています。

     (a).営業権が市場で取引されていない場合
      用対連細則第26第2項において、平均収益額から企業報酬額及び自己資

      本利子見積額を控除して求めた超過収益額を還元利回りで還元して求める
      こととされています。

  b.資本に関して通常生ずる損失の補償
     営業廃止に伴い不要となる営業用の固定資産と流動資産は処分することとなりま
     すが、その際に生ずる損失とその他資本に関して生ずる損失は、以下のとおり処理
     します。

     (a).建物、機械、器具、備品等の固定資産の売却損の補償
      これらの固定資産は、現実に売却できる場合、解体せざるを得ない場合、ス
      クラップ価値しかない場合に分け、処理します。

      ・現実に売却できる場合・・・    
      
     用対連では現在価格の50%を標準として補償することとしています。

      ・解体せざるを得ない場合・・・    
                建物等の固定資産で買手を探すのが困難であり、解体せざるを得ない
                場合は、「現在価格+解体費-発生材価格」により売却損を求めます。

      ・スクラップ価値しかない場合・・・    
                耐用年数が相当に経過し老朽化して処分価格がないと認められるもの
                は、「現在価格-スクラップ価格」により売却損を求めます。

     (b).商品、仕掛品、原材料等の流動資産の売却損の補償
      用対連では費用価格(仕入費及び加工費等)の50%を標準として補償すること
      としています。

     (c).その他資本に関して通常生ずる損失の補償
      営業を廃止することにより、契約を解除せざるを得ない場合に生ずる違約金、
      社債の繰上償還に伴う費用、清算法人に要する費用等がありますがそれぞれ
      企業の実情に即して補償することとなります。

  c.労働に関して通常生ずる損失の補償
     労働に関して通常生ずる損失は以下の3つに分かれ、以下のとおり処理します。

     (a).解雇予告手当相当額の補償
      営業を廃止することに伴い従業員を解雇する場合は、労働基準法第20条の規
      定に基づき平均賃金の30日以上を補償することとなります。しかし、事業主の
      解雇の予告が30日以前であれば解雇予告手当を支払う必要がないので、解
      雇の予告期間の猶予がある場合、この補償をする必要はありません。解雇予
      告手当相当額の補償は、30日以上ということで何日分が補償として妥当かと
      いう問題がありますが、労働力の確保が容易か否か等により判断し、労働力
      の確保が困難な時は補償日数を多くすることとなります。

     (b).転業期間中の休業手当相当額の補償
      営業を廃止することに伴い転業をすることが相当であると認められる場合、従
      業員を継続して雇用しておく必要があると認められる場合には、従業員に対
      し休業手当相当額を補償します。これは、企業が新たな事業を再開するまでの
      間、必要最小限度の従業員を確保しておく必要があると認められる場合に新
      たな営業を開始するまでの期間の賃金を補償しようとするもので、次式で求め
      ます。      
      

         補償額=平均賃金×休業手当補償率×転業に要する期間

             ・平均賃金は直近3ヶ月の平均賃金(賞与も含めます。)です。

             ・休業手当補償率は60/100から100/100の範囲で80/100が標準です。

             ・転業に要する期間は、事業主が新たな営業を開始するまでの期間です。
             引越荷物として取扱うことが適当なもののことをいいます。

     (c).その他労働に関して通常生ずる損失の補償
      営業の廃止または転業をすることに伴い、労働に関して通常支出が予想される
      経費としては、転業期間中に事業主が負担している雇用保険料、社会保険料
      健康保険料等の経費がありますが、営業の廃止又は転業を原因として支出す
      ることが相当であるか否かを検討し妥当と認められる経費を補償することとなり
      ます。

  d.転業期間中の従前の収益(所得)相当額の補償
     営業廃止の補償は、営業を廃止し転業することを前提とする補償で、転業するまで
     の期間に対応する従前の収益を補償する必要があります。転業期間中の従前の
     収益相当額の補償は、次式で求めます。

       収益相当額=年間の認定収益額×転業に要する期間

             ・認定収益額は、売上高から必要経費を控除して求めます。この場合、個
            人営業の場合の自家労働の額は必要経費の中には含めません。

             ・転業に要する期間は、営業地の地理的条件、営業の内容、従来の営業
              の業種と転換後の業種、事業主の年齢、学歴、経営手腕等の個人的事
              情等により異なり、2年の範囲内で決めます。ただし、事業主は高齢であ
              ること等により円滑な転業が特に困難と認められる場合には3年の範囲
              内で定めることとなります。

  e.解雇する従業員に対する離職者補償
     営業廃止に伴って解雇された従業員のうち直ちに再就職することが困難と認めら
     れる場合は、本人の請求により離職者補償をすることができることとなっています。
     この離職者補償は、解雇されなければ、従前どおりの所得が得られるであろうと
     想定される従業員に対して、再就職に通常要する期間について従前の所得相当
     額を補償するもので、次式により求めます。

       補償額=賃金日数×補償日数-雇用保険相当額

             ・賃金日数は、算定時前6ヶ月以内に被補償者に支払われた賃金の総額
              をその期間の総日数で除して得た額の60/100から100/100の範囲内で
              80/100が標準です。

             ・補償日数は、55歳以上の常雇については1年とし、臨時雇用及び55歳未
              満の常雇については、雇用条件、勤務期間、年齢、労働力の需給関係等
              を考慮して、1年の範囲内で定めます。

             ・雇用保険相当額は、雇用保険受給資格者について、勤続年数や年齢等
              を考慮して雇用保険法第22条及び第23条の規定に準じて、次の表により
              定めた日数により受給予定額を算定します。

 

             ・離職者補償の対象者は、常雇用及び臨時雇用のうち雇用契約の更新に
              より1年を超える期間継続して同一事業主に雇用されたものとする。また、
              離職者補償は営業廃止により失業したものに対して補償するもので、雇
              用保険に加入している雇用保険受給資格者は、当該雇用保険支給相当
              額は控除する必要がある。なお、離職者補償は、別途、従業員に直接に
              補償するもので事業主に対して行う補償ではありません。

3.造作買取りないしは費用償還額の補償


 基本的には時価によって補償を求めることとなります。

4.引越料などの移転に要する実費の補償


以下のa~cを合算して求めることとなります。

  a.引越料
    引越料は、以下の(a)~(c)を合算して求めることとなります。

     (a).屋内動産*の移転料
      建物の占有面積及びその収容状況等を調査して、地域における標準的な一般
      貨物自動車の運賃により算定します。

       *屋内動産とは、居住用家財、店頭商品、事務用什器、その他の動産で普通
       引越荷物として取扱うことが適当なもののことをいいます。

     (b).一般動産*の移転料
      品目、形状、寸法、容量、重量、その他台数等を調査して、地域における標準
      的一般貨物自動車の運賃により算定します。

       *一般動産とは、木材、薪炭、砂利、庭石、鉄鋼、据付けをしていない機械機
        器又は金庫その他の動産で、容積及び重量で台数積算を行うのが適当な
       ものをいいます。

     (c).(a)・(b)の場合にて、取扱いの困難な動産の移転料
      実情に応じて梱包、積上げ及び積卸し人夫賃、易損品割増料、その他必要と
      認められる特殊経理等を加算して算定します。

  b.移転雑費
    移転雑費料は、以下の(a)~(c)を合算して求めることとなります。

     (a).移転先等の選定に要する費用
      賃借人が自ら移転先等を選定する場合には、交通費及び日当に選定に要する
      日数*を乗じて得た額。

         計算式:交通費+日当×選定に要する日数*

      宅地建物取引業者に依頼して選定することが適当であると認められる場合に
      は、交通費及び日当に選定に要する日数*を乗じて得た額に宅地建物取引業
      者の報酬額に相当する額を加えた額。

       計算式:交通費+日当×選定に要する日数*
                                                         +宅地建物取引業者の報酬額

       *選定に要する日数は、下記表を限度として実情に応じて適宜求めます。

      **宅地建物取引業者の報酬額は、媒介報酬相当額を計上します。
       引越荷物として取扱うことが適当なもののことをいいます。

     (b).法令上の手続きに要する費用
      法令上の手続きに要する費用は下記の①~③のうち必要とされるものを合算
      して求めます。

       ①建物等の移転に伴い必要となる住民登録、印鑑証明、転出・転入証明等
         の官公署に対する法令上の手続きに要する費用

       ②上記手続きのために必要な交通費及び日当

       ③その他

     (c).転居通知費、移転旅費その他の旅費
      転居通知費、移転旅費その他の旅費は下記の①~⑤のうち必要とされるもの
      を合算して求めます。

       ①書状による転居通知のための費用

       ②当該地域の慣習による引越あいさつのための物品の購入費

        ③建物等の移転のための契約に要する費用

       ④移転に伴い転校等を余儀なくされる場合の新規教材購入費等の費用

        ⑤世帯人等に応じた移転のための交通費及び日当

       ⑥その他

  c.就業できないことにより通常生じる損失額の補償
   賃借人等が移転先等選定、移転前後の動産の整理、移住m法令上の手続等のた
   めに就業できない時は、当該地域における平均的な労働賃金に下記表の日数欄
   に挙げる日数を限度として実情に応じて適宜求めた日数を乗じて得た額を補償しま
   す。
   


5.賃借人が他に移転することにより被る精神的もしくは
  生活上の利益の喪失に対する補償


賃借人は他に移転することにより被る精神的もしくは生活上の利益の喪失に対する補償は、個別性が極めて強く個々の案件により大幅に異なります。そのため簡単な算定方法がないことから専門家に相談するのがベストだと思われます。

6.その他の補償

その他の補償は、上記以外の立退きに伴い生じる費用について個々に計算し求めます。

(注)上記以外の項目に借地・借家の返還により賃貸人が得るであろう再開発利益の配
   分額があります。
   再開発利益の配分額は、再開発や商業地等の再開発利益が大きくなるような場合
   に、この利益の一部を賃借人に配分されることがあります。ただ、再開発利益は個
   別性が極めて高いために簡単な算定方法はなく、不動産鑑定士の鑑定評価等から
   算定するのがベストと思われます。


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